8. 医療法人の理事長

理事長兼病院長のイメージ

 愛知県名古屋市の玄関、JR東海道新幹線「名古屋」駅直結の40階建超高層ビル「JPタワー名古屋」オフィス棟に社団医療法人『天鯱会(てんしゃちかい)』の本部があります。天鯱会は総合病院『蛸酢(たこす)ホスピタル』を愛知県、東京都、大阪府に展開しており、創設者の理事長兼病院長 蛸酢久里(たこすきゅうり)がTVCMに自ら出演し「診療待ちなしすぐタコス」を連発して注目され、また積極的にマスコミに露出して全国的に知名度を上げました。

 蛸酢久里は島根県出身で小学校教師の息子として幼少から『神童(しんどう)』として地域では知られていました。そして幼馴染には、大社(おおやしろ)の神主の家系にあり『大物(おおもの)』と呼ばれていた万屋(よろずや)豊作みやこ財団理事がおり、共に神戸の灘中、灘高に同じ寮から通い切磋琢磨して成長した竹馬の友なのです。

 その後蛸酢久里は防衛医科大学校に進学し、約10年間の自衛隊勤務で配属されていた兵庫県川西市にある自衛隊阪神病院で外科医としての腕を磨き、看護師であった奥さんの地元名古屋市で蛸酢診療所を開所し、三大都市に病院を持つ『蛸酢ホスピタル』にまで発展させたのです。

 しかし如何せん、名古屋で代々経営している病院と違い新参者であり、本院病院敷地の場所も広さも決して満足できるものではありませんでした。したがって、蛸酢理事長は本日の理事会の議題二つのうちの新病院建設敷地の提案には非常に期待しているのです。それは優秀な外科部長である次男からの議題でした。

 そしてもう一つの議題は、MS(メディカルサービス)会社の社長を任せている長男から古参の理事を通して、フランス製の手術支援ロボットの本病院への導入の提案です。しかし、フランス製などピンクの豹かNISSANとすったもんだのカーメーカーしか思い浮かばない蛸酢理事長には非常にうさんくさい話と思えるのでした。

 これまでの人生で蛸酢理事長は本当に欲しいものは必ず手に入れてきました。そう、医師の資格、きれいで可愛かった奥さん、自分の病院、かわいい子供達。

 しかし、子育てに関しては半分失敗したと認めざるを得ませんでした。本来医師となり病院長及び理事長の片腕と成り将来の後継者となるべく育てたはずの長男が、よもや医師の資格すら取れなかったのですから。今や、将来長男を支えるはずの次男と長女の方が医師として病院を統率し、はるかに発言力を持っているのです。

 蛸酢理事長は長男は医師ではないがMS(メディカルサービス)法人を立派に運営して経営をよく学んでくれれば、将来は天鯱会の理事に引き上げ、やがては理事長として後を継いでもらおう、そして優秀な外科医の次男に病院長になってもらおうとの夢を持っています。したがってこのような訳の分からない投資話などを理事会に持ち込んで皆の信頼をなくしてほしくはないのです。それでなくとも理事である優秀な次男や長女には疎(うと)まれているのですから。

 しかも社団医療法人の理事長は原則医師免許が必要であること、さらにMS法人代表取締役との兼務は医療法に抵触する危険があり難しいことを最近になって知り、何とかならないかとも頭を悩ませているのです。

 後継者に悩む富裕層を地で行く親馬鹿の蛸酢理事長ですが、医師以外を医療法人の理事長に据えることの難しさも感じていたのでした。

解説

 医療法人の理事長に医師以外がなれるのかを、国家戦略特区の規制緩和と合わせて学びましょう。

 医師以外の医療法人理事長就任|国家戦略特区の規制緩和