9. 医療法人の資金調達

コメダ珈琲店の小倉トースト

 社団医療法人天鯱会の定例理事会は毎月1回、朝食を取りながら行われています。応接会議室の長テーブルには蛸酢久里(たこすきゅうり)理事長を含め10名の理事とゲストが席についてナプキンを膝の上に乗せており、各自の目の前には理事会議事プリントとコメダ珈琲店から出前を取った豪華な特注モーニングセットが置かれています。

 時間になり、蛸酢理事長が両手を合わせると他の理事達も各自両手を合わせて理事長の「いただきます」に合唱して理事会が開始します。

 本院(名古屋病院)、東京院、大阪院の4半期業績と次期業績予想を先月実績を踏まえて担当理事は次々と報告して行きますが、蛸酢理事長の質問には即座に的確な返答をしないと理事長の雷が落ちますので、理事達は十分な準備をしつつ緊張した面持ちのまま名古屋名物小倉あんをたっぷり乗せたトーストを黙々と口に運び自分の番を待っているのです。

 しかし、理事達と同じ長テーブルについてますが一人だけ緊張感がまるで感じられない者がいました。その男は周りを気にもせずシロップを一瓶全部かけたシロノワールをフォークとナイフでカチャカチャと音を立てて大きく切り、のどちんこ( 口蓋垂(こうがいすい) )が見えるくらい開けた口に運んでくちゃくちゃと食べています。

 蛸酢理事長は無理してそちらを見ないように、理事の発表に集中しているように時折うんうんと頷いていましたが、内心は「あの馬鹿、大人しく座って待っとらんかい」と腹立たしいのと情けないのとで心中は嵐のようです。

 そうです、このくちゃくちゃがMS法人代表取締役に就かせている長男の蛸酢一杯(たこすいっぱい)なのです。ペタッと撫でつけた髪を耳上で揃え、 白いドレスシャツに赤い蝶ネクタイを締めネイビー色のジャケットに袖を通しています。どう見ても医師には見えず(もちろん医師ではないですが)、30代半ばになり多少の落ち着きと貫禄を出してほしいと古参の理事を指導役に付けていますがどう見ても体は大人、中身は子供のままなのです。

 理事達の発表も一通り終わり、蛸酢理事長が発言いたします。

「今後天鯱会では業務拡大を積極的に進めたいと思っております。施設・設備の最新化もして参ります。そのための資金手当て、独立行政法人福祉医療機構等の利用も検討しております。本日2つの議題がございますが、理事の皆様には前向きの案を出していただきたいのです。」

解説

 社団あるいは財団医療法人の理事会決議事項とファイナンス(資金調達)について学びましょう。

 医療法人理事会とファイナンス|独立行政法人福祉医療機構