とっても危ういリハウスのCM | おばあちゃんの家

三井のリハウスの放送中(平成29年5月現在)のテレビCM 「おばあちゃんの家」をご覧になったことはございますか。CM 好感度第2位(CM総合研究所調べ、2016年9月前期)とリハウスサイトに堂々と紹介されていますね。15秒バージョンと30秒バージョンがありますが、30秒の方をまずはご覧ください。
私も最初は微笑ましいCMと感じて見ていましたが、何か心に引っ掛かりを覚えたのです。
このCMは好評らしいので、続編も期待されるところですが、ストーリーの展開によっては私が感じた危うさが現れてしまうかもしれません。
【注】続編が公開されました。それについては最後にご説明します。

おばあちゃんの家のストーリー

その内容は、CMギャラリーの作品紹介欄で、「新TVCFは、少し前に相続したおばあちゃんの家を手放すことになったある家族の物語です。他界したおばあちゃんの家の片付けをしている最中、孫娘にだけ見えるおばあちゃんが登場し、孫娘と言葉を交わします。おばあちゃんのユーモラスなのにどこか深い言葉が印象的なCMになっています。二人のやり取りを通じて、思い出の詰まった家を手放す家族の気持ちを表現し、家族にとって“相続した家”はどうあるべきか、を考えさせる内容となっています。」としています。(女優さんの紹介等は割愛させて頂きました。)
おばあちゃんは息子に梱包紐を投げて当てたり、孫娘と会話するだけではなく、へそくりをくれたり、おでこを見せるように髪留めを付けてくれたりします。
微笑ましいCMになっています。ショートドラマとして良い作品だと思います。

おばあちゃんの家を売ることの問題点

しかし、このCMの最初には、「おばあちゃんの家を売ることになった」と孫娘の声でナレーションが入っています。CMの流れから見て、孫娘の父親、つまり頭におばあちゃんから紐を頭に当てられた男性が相続人として売るということになるのでしょう。
不動産の相続物件は、相続登記が完了していないと買主に名義変更できません。したがって、もう相続人間の遺産分割協議もまとまって売却を進めることになったと思われます。
となれば、孫娘は売主の家族であるとともに、「関係者」ということになります。
つまり、売り出す住宅には、今まさに霊が出ていて、売主の関係者は会話もかわすほどその存在を実感していることになります。実際、ポルターガイスト現象が起きていますしね。

孫娘のこれからの行動

孫娘の言葉を借りれば、「おばあちゃんは私にだけ見える」そうなのですが、孫娘はこれからどうするでしょうか。おおむね次の3つの行動が考えられます。

家族におばあちゃんの霊の存在と会話ができることを告白する

孫娘にとっては信じてもらえるかどうかが問題ですが、そのような話を父親である売主が聞いたことが重要になります。今、この家には霊が出るよという話を聞いて、売り出すときに売主がそれを表示する必要があるか、です。

どうせ信じてもらえないと思って誰にも告げずに内緒にする

父親である売主は当然霊が出ることは知らないで売り出すことになりますね。問題は、知らないことに売主の「過失」があるかどうかですね。父親が娘の不可解な行動、独り言を言っていたりに気づいたのではないかということですね。

家族には告げないが、三井のリハウスの担当者には告白する

担当者の立場になれば、「なぜ知らせた」ということになりますね。知らなければ、物件概要書やレインズ、サイトに「心理的瑕疵」と表示するかどうかで悩まなくて済んだでしょうに。殺人、自殺等の場合は表示するのは明らかですが、霊ですからね。

心理的瑕疵とは

心理的瑕疵は、その物件で殺人などの事件、自殺等、一般の人がその情報が購入するかどうかの判断に影響する場合に表示しなければいけません。殺人、自殺などは明らかですから、担当者も売出し価格を一般の相場より低くして販売しましょうとアドバイスすることでしょう。
殺人事件が起きた物件は建替えしても販売は厳しいかもしれませんが、自然死で発見が遅かった場合や自殺の場合などは割りと平気な方もおられますので価格を抑えれば販売可能です。
しかし、霊が出るという話の場合、心理的瑕疵として表示しなければいけないかどうかと悩みますね。
かなり以前に出たことがある、そんなうわさがあった、という程度なら心理的瑕疵としての表示はいらないと判断しても、後で損害賠償責任を負うまでにならないと思われます。
ただ、この場合は、今出るということですからね。さらにややこしいのは孫娘にしか見えないということ。つまり、告げられた担当者は黙っていても分からない、と判断できるかも知れません。でも、ポルターガイスト現象が出たらと考えると…。

空き家が増加する現状

おばあちゃんのユーモラスなのにどこか深い言葉 「家ってねぇ、人が住まないとだめになっちゃうからね。」は印象的で、空き家が増加している現状を改善しようという意図もあるのですね。それは良く分かります。
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」では、空き家を売却して得た譲渡所得から3,000万円を控除できます。全国で空き家が増加していることに対して、「空き家対策特別措置法」(平成26年11月27日公布、平成27年2月26日施行(関連規定は5月26日施行))を根拠として、空き家の減少を進めることを目的として平成28年4月1日にこの特例は施行されました。

危うさを内包したCM

本作の演出には、大手通信会社で話題作を作り続ける監督を起用されて、好感度を上げる効果が出ていますね。この方は三太郎シリーズやヒノノ二トン、さらにはトライのハイジシリーズなども手がけていて、確かに話題作を作り続けています。
本作品も絶妙の演出で、良いイメージを醸し出しています。ただ、普通のドラマでこのようなシーンがあったら素直に見れるのですが、不動産流通業界を牽引する立場の不動産会社のCMですからね。社内の誰も危ういと思わなかったのでしょうか。

今後の対応

もし続編が出るとしたら、この危うさが現れることを逃れる術はあるのでしょうか。例えば、次の2つの展開はどうでしょう。

天に召される

おばあちゃんの家が新しい買主に売却された後、おばあちゃんは天に召される(成仏する)展開にするのは良いですね。ポルターガイスト現象も出ないでしょうから、不告知が問題にならないでしょうし、損害賠償請求もされないでしょう。

息子家族の家に引越す

また、おばあちゃんは息子の家に引越すことにするのも良い手でしょう。孫娘とずっといっしょにいたいから、という理由にでもして。この場合は、将来息子の家を売却する際に同じ問題が発生するのが欠点といえます。
でも、間違っても、そのままその家に住み続けるのは駄目です。心理的瑕疵の不告知を問われ、損害賠償請求や買戻しを請求されたりするかもしれません。仲介会社の責任も問われます。裁判に進んだ場合に証拠の立証が難しい事件になるでしょうから、判決がどうなるかは分かりませんが。
まあ、私も不動産業界で長くなるので気になるのであって、一般の方はこのCMを見ても何とも思わない、良いCMでしょうね。でも、不動産業界では、結構「心理的瑕疵」には敏感なんですよ。決済が終わり、買主が住み始めて初めて気づき、後からクレーム等の問題が発生することになります。対応する担当者も終わったはずの案件に時間と手間をとられてしまうので、売上にひびきますから。
とっても危ういCMだと思います。

【追記】続編公開されました

【追記】 続編が公開されました。VOL.2 「新しい家」編です。また、WEB限定の「新しい家・猫舌」編も作られています。
今後の対応で述べました2つの展開のうち、おばあちゃんは息子家族の家に引越すことを選択されました。おばあちゃんの家を売却して、新しい家を購入し、おばあちゃんは猫の姿をして家族の一員となったようです。また、娘さんは誰にも何も言わなかったのでしょう。売却したおばあちゃんの家にはもう幽霊はでないので、買主のクレームが来たりはしないでしょうから、良かったですね。