シャープ買収について

(初稿2016/3/1、最終更新2016/3/27)

鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープ買収では、鴻海(ホンハイ)がDD(デューデリジェンス)と言われる法務面、財務面、税務面、人事面等でのシャープの企業価値の調査中に、シャープが偶発債務の存在を通知していなかったのであれば、通常のM&Aでは最終契約締結の撤回の危険性を持つものですから、仲介会社かアドバイザーがそのようなことのないように十分にアドバイスしておかなければならなかったことです。
しかし、シャープ経営陣にとっては、買い手は鴻海(ホンハイ)だけではないという意識があり、今回の買収の主導権はこちらにあるという気持ちが強いのではないかと思われます。思われました。
このまま偶発債務を精査して圧縮し、鴻海(ホンハイ)との契約が早ければ7日と言われていますが、機構が降りた状況では何としても最終契約締結につなげたいことでしょう。従業員や日本のためにこの選択が正解かどうかは数年後にならないとわからないでしょうが、「シャープ」の名を残すように頑張ってもらいたいものです。
当初の契約日から7日の予定に延期し、10日も厳しい状況で、完全に鴻海(ホンハイ)に主導権を握られてしまった印象がします。まずは産業革新機構より好条件を提示して、シャープの主力取引銀行に負担が少ないと喜ばせて後押しをさせ、機構に勝ったら、理由をつけて契約を引き伸ばして有利な条件に変えていく作戦だったところに、偶発債務という願ってもない理由をシャープ側からくれたのですから、本当に鴻海(ホンハイ)にとっては有難いと思っているのではないかと想像してしまいます。
偶発債務が3,500億円から圧縮できたからと言って、良かったと鴻海(ホンハイ)がそのまま追加負担は受け入れないでしょう。まずはシャープの主力取引銀行に支援条件の見直しを求めるようですが、結局は機構の条件の方が良かったとならないことを祈ります。
契約ごとは、最初につまずくと最後までゴタゴタすることが多いですから、トラブルのないようにアドバイザーが導くことが重要です。毎日不安に過ごすシャープの従業員とそのご家族のためにも、これまでシャープを支えてきた株主のためにも力を尽くして頂きたいものです。それと、シャープの経営陣は高額の退職金を受給すると社員にゴールデンパラシュートで逃げると思われますので考慮して下さい。
最終契約は4月に延期しそうですね。
(3月27日現在)鴻海(ホンハイ)の条件が産業革新機構よりも下回り、シャープと主力取引銀行はそれを受け入れて何とか3月末の最終契約にしたいところです。主力取引銀行の融資は延長されるので3月末にこだわらなくとも良いところですが、今期をギリギリ黒字決算の予定のところが赤字決算になりそうで、その数字を出す前に最終契約をしたいというのが本音でしょう。
普通、赤字会社のM&Aは成立が非常に難しいです。将来大きな利益を生む特許などがないと、なかなか買手が現れません。シャープの場合はIGZO(イグゾー)というアモルファス半導体等の液晶ディスプレイを商品化できる技術を有していますが、鴻海(ホンハイ)がそれにどこまで価値を見出すかが最終契約に至るかどうかになるでしょう。
「IGZO系酸化物半導体TFT」の特許は科学技術振興機構にあり、シャープの「IGZO」登録商標は否定されています。この特許のライセンス供与はシャープ以外にサムスン等複数の企業にもされており、シャープの独占ではないからです。しかし、シャープはすでに大量生産化に成功しており、さらにIGZOを超える液晶の開発にも着手しています。鴻海(ホンハイ)は自社でライセンス供与を受けて商品化する技術を身につけるのに多額の費用と時間がかかるため、手っ取り早い買収に動いているわけです。
鴻海(ホンハイ)にとっては赤字決算の結果を待てばさらに大きく買い叩くことができると踏んでいるでしょう。日本企業に対して国が95%以上出資している産業革新機構が算出した3,000億円という数字は正味の価値であると、外資の営利企業・ファンドは判断するでしょう。さらに外国企業が買収する際の環境リスク等も含めて考えると、機構の半額で買えれば良い取引をしたと判断するところですから、当初の提示額を実際に払うつもりだったとは考えにくいところでした。

東芝メディカルシステムズのキャノン売却も気になるところです。でしたが、一旦ファンドに株式譲渡をし、その後にキャノンに移すことで独占禁止法の問題に引っかからずに3月内の売却完了を果たすという思い切った方法をとりました。まあ、認められるかはこれからでしょうが。しかしこれで、富士フイルムの質問状もかわすことになるわけですか。白物家電の中国企業売却にしても、東芝とシャープを比較した場合、東芝の方がはるかに手際が良いですね。